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『ローズのこと』




(English follows)



5月、6月はバラの花が美しく咲き誇る季節。


通学路で、ご近所さんの庭で、いつもの散歩道の片隅で、


私たちの季節がきた!と言わんばかりに、誇り高くそして可憐に花開く。


真紅の赤、ベビーピンク、ライトイエロー。


小さいのや大きいの、ツボミがいっぱいのやもう少しで咲き終えてしまうもの。


どれもそれぞれに可愛くて、思わず足を止め魅入ってしまう。




「ポエティーク・レ・ビジュー」のデビューコレクションとして2年前に発表した『R O S E』。


よくこのコレクションをご覧になるお客様から、


”バラがお好きなんですね!”と言われることが多いのですが、


実はこの『R O S E』コレクション、


インスピレーションになっているのはお花のバラだけではないのです。


もちろん、バラは大好きな花の一つですが!




『R O S E』はメイドとして働くある女性の名前。


これは彼女の物語です。



*



完璧主義でしっかり者のローズは、責任感のあるとても頼もしい大人の女性。


一番上までボタンアップされた真っ白いブラウス、


櫛で綺麗にとかされてキツく束ねた髪、


マットなワイン色の口紅は少しの乱れもなくいつでも完璧に引かれている。



職場じゃ誰も直接聞こうとしないから、


彼女のプライベートは謎のベールに包まれたまま。



「ねぇ、ローズって恋人いるのかしら?」


「きっと独りよ、毎晩9時にはベッドにちゃんと入りそう!」


「彼女ってお家でもあんなにきちっとしてるのかしら。。?」







ある金曜日の夜遅く、


最後に仕事を終えたメイド仲間の一人が帰ろうとした時でした。



(あら、これきっとローズの忘れ物だわ!)



更衣室の鏡の前に、きれいな彫りのある小さなつげ櫛があるのに気が付きました。


こんなものを持ち歩くのはローズの他にいませんから。



(明日は土曜日か。。。そうだわ、お家に届けてあげましょう。)




あくる日の午後3時過ぎ、


彼女は少し緊張した面持ちでローズの家へと向かいました。



(デニムなんてはいてきちゃった。。。こんなカジュアルな格好で気を悪くしたりしないかしら?)



ピンポーン。


一度大きく深呼吸して、思い切ってブザーを鳴らしました。



「はーい、今開けまーす!5階へどうぞ。」



(あれ?住所間違えたかな??)



なんだかいつもと違うローズの声。


不安げに古い木の階段を上って行くと、部屋の扉の前にやってきました。



「あらいらっしゃい!どうぞ入って。」



ゆっくりと扉が開き、一歩足を踏み入れたその瞬間、



「わぁー、なんて素敵!!」



彼女は思わず声をあげてしまいました。




そこで彼女が目にしたのは・・・



大きなガラス窓から差し込む柔らかい陽の光、


それに照らされて明るいピンクベージュのトーンで輝く広いリビングルーム。


イギリス風のアンティークの家具が部屋中にセンス良く置かれていて、


レースのカーテン越しには古い詩集が並べられている。


(ページが開いているから、読みかけかしら?)


それから、真ん中の大きな丸テーブルの上には淡いピンク色したバラのブーケが綺麗に飾られていて、


なんとも優しい香りが部屋中に漂っている。





「さぁどうぞ。アールグレーでいいかしら?」



立ち止まる彼女の気を引くように、そっとお茶を勧めるローズ。


そこでやっとローズの声に気がつき振り向くと、


”ハァ。。。”


と感嘆のため息。



ソファに腰を下ろして優雅にお茶を入れる彼女の姿は、まるで別人を見ているよう。。。


ほどかれて自然に下ろされた柔らかな髪、


無造作に羽織られたシルクのローブに身を包んで、


大きく開いた胸元にはクラシックなチェーンのネックレス、


揺れる長いピアスなんて着けている。


とってもリラックスして自信たっぷりな笑みを浮かべてる。


こんなローズ、見たことがない!



そのうち、


奥の部屋からオペラの音に混じって誰か男の人の声がしたと思うと、


「ダーリン、ちょっと散歩に行ってくるよ。」


だって!!!



*



これは秘密でも何でもない、ローズのこと。


堅苦しいユニフォームを脱ぎ捨てた瞬間に溢れ出る、優しいフェミニ二ティー。


異なる二面性を持つ女性が魅力的なのはいつでも人を驚かせるからだ、と彼女が教えてくれているよう。


でも本人にとっては全く自然で自分らしくいるだけ。